macOS/Homebrewで複数バージョンのPostgreSQLを共存させる方法(2018年版)

複数の PostgreSQL クラスタ(インスタンス)を起動するで書いたように Ubuntu 環境では、普通に apt-get でインストールするだけで複数バージョンのPostgresqlを共存させる状況が整います。

しかし、macOS/Homebrew 環境ではちょっとした準備作業が必要となります。以下、その概略を説明します。

【重要な注意】 以下の手順では、いずれのコマンドも sudo を付けずに実行してください。

【参考資料】 Macで複数のバージョンのPostgresqlを共存させる -- itmammoth 氏による 2016 年 3 月の記事。

SDK Headersのインストール(2019年1月追記)

macOS 10.14 (Mojave) を利用している場合は、次の手順で SDK Headers をインストールします。

  • Finderで「ライブラリ」→「Developer」→「CommandLineTools」→「Packages」を開く。
  • macOS_SDK_headers_for_macOS_10.14.pkg」をダブルクリックしてインストール。

【参考資料】

インストール済みの PostgreSQL を無効化

まず、現在の環境に PostgreSQL がインストールされているかどうかを確認します。

$ brew search postgresql

リストの中にある postgresql の右に ✔ アイコンが付いていればインストール済みです。次のコマンドで無効化します。

$ brew unlink postgresql

リポジトリの追加

リポジトリ petere/homebrew-postgresql を追加します。

$ brew tap petere/homebrew-postgresql

postgresql-common のインストール

$ brew install postgresql-common

PostgreSQL のインストール

インストール可能な PostgreSQL のバージョン番号は brew search postgresql コマンドで調べられます。表示されたリストの中に petere/postgresql/postgresql@X という項目があれば、バージョン X の PostgreSQL がインストール可能です。

例として、バージョン 9.6 と 10 をインストールしてみましょう。

$ brew install postgresql-9.6
$ brew install postgresql-10

もう一度 brew search postgresql コマンドを実行し、petere/postgresql/postgresql@9.6 および petere/postgresql/postgresql@10 の右側に ✔ アイコンが付いていることを確認してください。

クラスタの作成

ここから先は Ubuntu 環境の場合とほぼ同じです。ただし、データディレクトリ、設定ファイルの置き場所、データベース postgres の owner など、細かな違いがあります。繰り返しになりますが、すべてのコマンドを sudo なしで実行してください(重要)。

さて、PostgreSQL 用語の「クラスタ」とは、ひとつの PostgreSQL サーバーインスタンスによって管理される複数のデータベースの集合体を意味します。ひとつの macOS 上で複数個のクラスタを同時に稼働させることができます。

PostgreSQL 9.6 のクラスタ mainbackup を作成します。

$ pg_createcluster 9.6 main
$ pg_createcluster 9.6 backup

さらに、PostgreSQL 10 のクラスタ main を作成します。

$ pg_createcluster 10 main

合計で 3 個のクラスタが作られたことになります。クラスタの状態を確認します。

$ pg_lsclusters

すると、次のような結果が表示されます(一行が長いので一部省略しています)。

Ver Cluster Port Status Owner  Data directory...
9.6 main    5433 down   kuroda /usr/local/var...
9.6 backup  5434 down   kuroda /usr/local/var...
10  main    5435 down   kuroda /usr/local/var...

3番目の Port 列に着目してください。それぞれのクラスタに対応するサーバーインスタンスがどのポートを listen するかが書かれています。なお、5番目の Owner 列には、現在 macOS にログイン中のユーザー名が表示されます。

クラスタの起動

PostgreSQL 9.6 のクラスタ main を起動します。

$ pg_ctlcluster 9.6 main start

クラスタの状態を確認します。

$ pg_lsclusters

すると、次のような結果が表示されます。

Ver Cluster Port Status Owner  Data directory...
9.6 main    5433 online kuroda /usr/local/var...
9.6 backup  5434 down   kuroda /usr/local/var...
10  main    5435 down   kuroda /usr/local/var...

1 行目の Satus 列の値が down から online に変化しています。

同様に、他の 2 個のクラスタも起動します。

$ pg_ctlcluster 9.6 backup start
$ pg_ctlcluster 10 main start

psql で接続確認

PostgreSQL 10 のクラスタ mainpsql で接続してみましょう。

$ psql --port=5435 postgres

--port オプションでポート番号を、接続先データベースとして postgres を指定しています。初期状態で存在する唯一のデータベースが postgres です。オーナーは pg_createcluster を実行したユーザーです。

次のように出力されれば、成功です。

psql (10.2 (Homebrew petere/postgresql))
Type "help" for help.

postgres=#

クラスタの停止

PostgreSQL 9.6 のクラスタ main を停止するには、次のコマンドを実行します。

$ pg_ctlcluster 9.6 main stop

ポート番号などの変更

クラスタの設定ファイルは /usr/local/etc/postgresql ディレクトリの下にあります。PostgreSQL 10 のクラスタ main の設定ファイルは、/usr/local/etc/postgresql/10/main ディレクトリにあります。

ポート番号を変更したい場合は、エディタで postgresql.conf を開き、port = で始まる行を探して値を書き換えてください。設定を反映させるには、クラスタの再起動が必要です。